大判例

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東京高等裁判所 昭和34年(ラ)352号 決定

抗告人がその居住する三井鉱山株式会社駒場寮からの立退を求められていること、抗告人が陸上自衛隊松戸駐屯部隊勤務により受ける給与月額二万二千余円より税金、共済組合掛金等を控除した残額は抗告人父子三名の生活費のほか長女尚子(当十六歳)及び長男紘一(当十四歳)の学資にも充てられ、なお抗告人は必しも頑健でなく長男も病弱で借財もありその生計に余裕がないこと従つて抗告人の受ける給与から税金、共済組合掛金等を控除した残額の五分の一の金額を差押えるときは抗告人が生活上窮迫すべきことは当審において新たに提出された各資料によつてこれを肯認することができるけれども、法定の差押禁止限度の拡張のためには、単に債務者側の事情だけを考慮するに止めることは許されず更にこれによつて債権者の経済に甚しい影響を及ぼさないものと認むべき顕著な事由がなければならないところ、債権者である相手方側の事情を見るに、相手方は三井鉱山株式会社三池鉱業所の坑内夫掘進工であつたが坑内事故のため負傷し昭和二十九年九月頃退職し、その頃抗告人の乞を容れて融通したのが本件差押申立債権であるところ、相手方は退職後は収入激減し現在の月収は一万四千円程度であり、妻は肺結核に罹つて入院手術し、長男(当十七歳)長女(当十四歳)次女(当十四歳)はいずれも在学中であり、これらの家族を抱えて生計に窮し、借財に苦しみ、生活保護法による医療扶助を受けたこともあること原審において相手方の提出した諸資料によつて明らかであり、その後これらの事情が好転したような事実はこれを認むべき資料がない。従つて原決定が差押を禁止すべきものと判断した限度を超えて更に債権者による本件強制執行を制限することが債権者である相手方の経済に甚しい影響を及ぼさないとは断定するを得ず、本件はかような影響を及ぼさないものと認むべき顕著な事由がある場合には該当しないから、抗告人側の事情は前記のとおりであるけれども、これを考慮しても原決定の示した限度を超えて差押禁止の範囲を拡張することはできない。

(川喜多 小沢 位野木)

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